ティーサロンではじめての茶芸体験
奥深い台湾茶の文化を学ぶ

テーブルの上にのった白い茶器入りの台湾茶
台湾あれこれ

「ミニュイの台湾シリーズ」について

ライターおよび料理家である筆者が、台湾の食や文化を現地で学ぶ「ミニュイの台湾シリーズ」。日本にいる頃にはじめた旅ごはんとお酒にまつわるソロプロジェクト「Minuit(ミニュイ)」の活動として、主に本サイトにて発信を続けています。

自身の目で見て体験する現地での生活、食文化、お出かけ先や旅行先でのあれこれを、写真とともにご紹介していきます。詳しくは第一回記事(台湾の食と文化を伝える、ミニュイの台湾シリーズ)をご一読ください。

サロンではじめての台湾茶芸体験

あるお酒の席で、台湾茶のプライベートサロンを経営されている方とお話させてもらう機会がありました。その方の「今度遊びにきてね」というお言葉に甘えて、ある週末、夫とチャオさんと一緒に自宅サロンにお邪魔させていただくことに。

中国茶教室に参加したりティーショップでお茶をいただいたりする機会は今までにも何度かありました。けれど、知り合いの方のサロンで台湾茶の茶芸を体験するのははじめて! 予定が決まってから、とても楽しみにしていたのでした。

木のお盆に並んだ台湾茶の茶器

しつらえが素敵な隠れ家サロンへ

約束の当日。民生社区と呼ばれる閑静なエリアのマンション一角にある、サロンに到着しました。出迎えてくれたのは、「朝茶夕酒」主人のElaineさんです。お部屋に足を踏み入れるとすぐ、たくさんの茶器や茶壷がディスプレイされた棚が目に入ります。

茶器や茶壷がセンスよく並べられた棚

Elaineさんが自宅兼アトリエとして使用しているというこちらの空間は、趣があってとても素敵です。ちなみにサロン名「朝茶夕酒」は文字どおり、「朝(日中)にお茶をいただいて、夕方(夜)はお酒を味わう」という意味。

お茶を飲むのも(もちろん)お酒を飲むのも大好きな私。はじめてお会いしたときにサロン名をうかがい、「好きな名前!」とピンときて今回の訪問をぜひ実現したいと思ったのでした。

台湾茶の茶芸体験、スタート

席について、いよいよ茶芸体験。Elaineさんが準備をしている間、台湾中国語で書かれたお茶についての紹介文を読む私たち。

茶芸師が台湾茶サロンでお茶を淹れている様子

今回飲ませてもらうのは、台湾中部にある海抜1000m以上の高地で栽培された「高山茶」。発酵度の分類としては半発酵で、青茶(ウーロン茶)の一種です。

日照時間が短く朝晩の気温差が大きいという高地特有の栽培条件から、この場所ではミネラルが豊富で渋みが少なく、深い甘みのある茶葉がつくられるのだそう。

台湾茶についての中国語説明テキスト

Elaineさんが扱うのは、海抜1700mの場所にある杉林渓(さんりんけい)という地区の茶園で栽培された高山茶です。限りなく自然に近い状態で栽培されており、嫡採から発酵まで丁寧に行なわれている高品質な茶葉だということでした。

お湯に注ぐ前の台湾茶の茶葉

お茶を淹れる前に、茶葉を見せてもらいました。日本でよく見る細長い茶葉と違って、コロコロとした丸い形をしています。またウーロン茶というと茶褐色の茶葉を思い浮かべますが、こちらはきれいな緑色。外観からも、軽めの発酵であることが分かります。

変化する香りと味わいを楽しむ台湾茶

まずはじめに、小さな急須にお湯をかけ、茶杯にもお湯を入れて温めるElaineさん。その後に茶葉を急須に入れ、熱湯を注ぎ入れます。

洗茶(茶葉を開かせるための行為)をした後に再び熱湯を注ぎ、急須の上からさらにお湯をかけて保温。一煎目のタイミングを待ちます。

茶海と呼ばれる器にお茶をうつし、それを茶杯に注ぎます。茶海を使うのは、お茶の濃さを均等にするためだそう。

茶芸師が台湾茶を器に注いでいる様子

急須の中で蒸された茶葉の香りを嗅がせてもらうと、お花のようにフルーティーで爽やか!ふだん飲んでいるウーロン茶の香りとはまったくの別物です…。

台湾茶のテイスティングメモ

ここからは、お茶を飲んだときに書きとめたテイスティングメモをご紹介していきます。

木のお盆に並んだ三つの茶杯

一煎目 

爽やかで苦味がほとんどない。香りを楽しむという感じ。

二煎目 

色が濃くなって、香りも鮮やかに。海苔のような青っぽさとほのかな苦味。

三煎目

色は二煎目とほぼ同じだが、豊潤で甘やかな香りが印象的。味わいも強い。

四煎目

だんだんと深みのある味わいになってきた。アフターに少し渋みも。

五煎目

あっさりとした味に変化。苦味は落ち着いてきて、渋みが強くなった。

六煎目

香りはややひかえめになった。飲んだ後にタンニンを感じる。

七煎目

香りも味わいも落ち着いて、強い甘みを感じられるようになった。

水分を含んだフレッシュな台湾茶の茶葉

お茶をいただいた後、茶葉をさわらせてもらいました。蒸し上がった茶葉はふかふかとしていて、このまま食べることもできてしまいそう! 最初の乾燥していた状態から、かなり嵩が増しました。

台湾には茶葉料理というジャンルがあります。また私自身も以前、中国各地でプーアル茶や緑茶を使ったメニューをいただいたことも。久しぶりに、おうちで茶葉料理をつくろうかな…などと思いながら、苦いのを承知で茶葉を味見させてもらったのでした。

貴重な老茶もいただきました

はじめにいただいたのは、民国108年(2019年)の若い茶葉でした。続いて、「老茶」と呼ばれる、甕のなかで熟成された貴重な茶葉も試飲させてもらえることに。甕の上部には、民国91年(2002年)と書かれています。

老茶の熟成方法はいくつかあり、甕に入れたまま一度も封を開けずに茶葉を寝かせたり、数年ごとに火入れをしたりというものが一般的です。

先ほどの若い茶葉と比べると、その色の変化は一目瞭然。どんな味わいになるのか、楽しみでなりません。

熟成された台湾茶の茶葉が入っている壺

というわけで、さっそく二度目のテイスティングをさせてもらうことにしました。

老茶のテイスティングメモ

民国108年(2019年)の若い茶葉同様、そのときのテイスティングメモを備忘録としたいと思います。

茶芸師が台湾茶を茶杯に注いでいる様子

一煎目 

パンやトーストのような香り、舌ではほのかな酸味が感じられる。

二煎目

丸みがあって複雑な味わい。飲んだ後の余韻が長い。

三煎目

二煎目と比べてさらにまろやかになった。バランスがよく、余韻も長め。

四煎目

お花やハーブを連想させる落ち着いた香り。飲み口は柔らかいまま。

五煎目

余韻がやや短くなり、甘みに加えて酸味が出てきたような感じ。

六煎目

香りはひかえめ、苦味のかわりに渋みが少しだけ感じられる。

七煎目

あっさりとした味わい、ほんのり梅のようなフレーバーも。

テーブルの上にのった白い茶器入りの台湾茶

老茶の場合は、茶葉が硬くしっかりしているので、若い茶葉以上にお湯の温度管理が大切になってくるそう。高温を保ちながら短時間で淹れることが、老茶特有の上品な香りやまろやかな旨みを引き出すことにつながるのですね。

また今回はどちらの茶葉においても、何度もお湯を注ぎ足して味わいました。二つの茶葉の違いはもちろん、同じ茶葉でもスタートから終盤まで、香りや味わいがどんどん変化していくのは興味深いものでした。

テイスティングの後はおやつタイム

テイスティングを楽しんだ後は、(チャオさんとサロン到着前に立ち寄ったベーカリーの)おいしい焼き菓子をみんなでシェアしながらおしゃべり。たくさんお茶をいただいたおかげで身体もぽかぽかになり、心身ともにリラックスできました。

お皿に並べられたデザートと台湾茶

私はまだまだ拙い語学力のため、どこまで理解できたのか分かりませんが…貴重な経験をさせていただき、とても嬉しかったです!

Elaineさん自身は台湾茶の先生ですが、彼女のお父さまも数十年にわたり台湾茶の販売に携わるいわば「台湾茶のプロ」。そのため、サロンでは茶芸体験だけでなく、茶葉を直接購入しておみやげに持ち帰ることもできるそう。

帰りは「いつかまた旅行ができるようになったとき、もし日本人のお友達で台湾茶に興味がある方がいたら声をかけてね」と、笑顔で見送ってくださいました。

さいごに

今回は茶席でしたが、Elaineさん自身、ワインやウイスキーなどもお好きなのだそう。お茶もお酒も、上質なものをじっくりと味わいながら親しい人たちとともに楽しむ、というのは理想的な楽しみ方。そういった意味でも、彼女の言葉には共感する部分がたくさんあり、学びの多い時間でした。

自宅では日常的にいろいろなお茶を飲んでいますが、台湾茶ひとつをとっても学べたことはたくさん。台湾のティーショップで購入したお気に入りの茶器でゆったりとお茶を楽しむ休日も、近いうちに実現できたらいいな。

Mizua

旅行雑誌の編集者兼ライター、週末バー店主を経て、現在は大好きな台湾での生活を楽しんでいます。本サイト「旅のあと ふたりのレシピ」運営のほか、台湾情報ブログも...

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