初夏においしい野菜と海鮮でつくる
ヘルシーな台湾の家庭料理
野菜と海鮮を味わう季節のテーブル
5月半ばの台湾は、すでに真夏のような暑さの毎日。湿度もかなり高くて、早くも夏バテになりそう…。
最近も変わらず頻繁に、チャオさんと夫と三人で(時にはお友だちや知り合いの方を交えて)食事をともにしていますが、みんな共通して「野菜がたくさん食べたい」「ワインも軽めがいいね」「お肉とか重たいものは少なめにしよう」と提案する日々です。
今回は、「旬の野菜と海鮮を味わう家庭料理」をテーマに、二週にわたって開催したワインごはんの会をまとめて振り返りたいと思います。
台湾らしい季節野菜を、多彩な味つけで
まずは野菜料理からご紹介していきます。一皿目は、「胡瓜」という野菜を使った炒めもの。胡瓜は日本語でキュウリと訳されることもありますが、チャオさんが今回市場で買ってきたのはヒョウタンの一種だそう。
外側は緑色、中身はズッキーニやナスのようにみずみずしくて、形もまさにヒョウタンという感じです。
細切りにした胡瓜を干しエビ、ショウガ、にんにく、ネギと一緒にさっと炒めてキチンスープを少しだけ加えたら完成。胡瓜の内側のとろりとした食感と皮周辺のしゃきっとした食感、どちらもたまりません!
二皿目は、カボチャとタケノコのサラダ。鹹蛋(シェンダン)と呼ばれる卵の塩漬けを細かく刻み、ボイルしたカボチャ、タケノコ、刻んだネギとともに和えた冷菜です。
私も夫も、カボチャやジャガイモなどのほくほくした食材は本来あまり得意ではないのですが…これはカボチャがしっとりしていて甘みが強くて、とってもおいしい!材料もシンプルなので、自分でもつくってみようと思いました。
三皿目は、地瓜葉(さつまいもの葉)を細切れの蒸し豚と一緒にソテーしたもの。
地瓜葉は熱炒(台湾式居酒屋)などでも必ず見かける台湾の定番食材。ていねいに下処理された上質な地瓜葉と自家製の蒸し豚を使い、上等なオリーブオイルと塩で味つけすることでワンランク上の一品に。
最後は、チャオさんの経営するレストラン四知堂TUAでも季節メニューとして提供している、ブッラータチーズと焼き野菜。
野菜は日によって変わりますが、この日はそら豆、オクラ、ミニトマト、ヤングコーン、マイタケでした。ブッラータは、台湾のチーズショップがつくる自家製です。
オーブンでじっくり火入れした野菜は、そのまま食べても味が濃くておいしい! 途中でオリーブオイルや塩、バルサミコ酢をたらして味わいの変化を楽しむのもチャオさん流の楽しみ方です。
初夏においしい海鮮を使った台湾料理
次は海鮮メニュー!まずは、台湾の初夏を代表する小巻(イカ)を使ったお料理から。過去に小巻(イカ)の関連記事がありますので、よろしければこちらもご覧ください。
小巻とセロリの炒めもの。さっと下茹でしたイカを、茎の細いセロリ、青ネギ、唐辛子、ショウガ、台湾醤油でソテーした一皿です。
イカはとても柔らかく、セロリの爽やかな風味が効いています。ショウガと唐辛子もたっぷり入っているので、ビールが飲みたくなってしまう…! 暑い季節に似合う、スパイシーなお料理でした。
そしてメインは、台湾で4〜5月に旬を迎えるカツオ。チャオさんは「白カツオ」という風に説明してくれましたが、調べてみたところ日本と同様にこの時期に出まわる、初鰹の仲間のようです。
台湾における魚の食べ方としては、「煎(油で揚げるように焼く)」と「蒸(蒸す)」が一般的。チャオさんが私たちに食べさせてくれたのはどちらも「蒸」の調理法ですが、一回は厚みのある身の部分を、ステーキのようにしていただきました。
旬のカツオは、身がしっかり引き締まっていて上品な旨みがあります。脂は少ないものの、部位によってはふんわりとした食感も楽しめて、日本のカツオとはまた違ったおいしさです。
もう一回は、薄めの切り身を平たい鍋に入れて、丸ごと蒸したもの。先ほどと同じように、細切りのネギと唐辛子がトッピングされています。
主な調味料は、だし、ナンプラー、醤油、みりん、紹興酒。日本やアジアの要素を取り入れたチャオさんの「蒸魚」は、なつかしさとおどろきが入り混じる、私たち夫婦の大好きな味です。
季節の台湾料理に合わせたワイン
さっぱりとした野菜&シーフードに合わせたいのは、重たすぎない白ワイン。ある日にいただいたのは、フランス・ラングドック地方のドメーヌ、Le Petit Domaine de gimios の Sec Des Roumanis Pet Nat。
ペットナット、いわゆる自然派の微発泡ワインで、細やかな泡と柑橘、黄色い果実、ハーブなどの香りが印象的な一本です。こちらは小巻とセロリの炒めものなど、薬味やスパイスを効かせたお料理にぴったり。
また別の日にはフランス・ローヌの白ワイン、Les Hauts d’Eole Crozes-Hermitage Blanc。造り手はCave de Tainです。ブドウはマルサンヌ主体で、ミネラル感のなかにはちみつやナッツのようなニュアンスが感じられます。
ちょうどそのときに味わったカボチャとタケノコのサラダは、料理とワインそれぞれがお互いを引き立てるような組み合わせで、みんなで「すごく合うね!」とびっくりしました。
また、同じ日にいただいたフランス・ブルゴーニュの白ワイン、Bouchard Pere & Fils のChevalier-Montrachet Grand Cru 2006 もさすがのおいしさ。
上質なバターや白い花を思わせる華やかな香り、飲んだ瞬間に舌に広がる旨み…。ワインと同じくバターのような芳醇な香りをまとったカツオの蒸しものと、ばつぐんの相性でした。
さいごに
薬膳の考え方では、旬のものをいただくことがすなわち、その季節に合わせて身体をととのえることにつながるとされています。例えば今の時期なら、余分な水分を排出してくれたり、身体の熱をさましてくれる食材をとる、というのも大切なこと。
台湾でチャオさんと出会って「一緒に本をつくろう」と話してから一年がたち、それぞれの季節を通じて、台湾の食材をシンプルに健康的に味わうということの楽しさ、大切さを今、改めて感じています。
チャオさんに教わりながら台湾の食や文化を記録していくという従来の活動に加えて、季節ごとの台湾食材を使った料理レシピ、台湾の伝統的な調味料や食材を使ったアレンジ料理なども、ご紹介していけたらいいな…と考えています。どうぞお楽しみに。
「ミニュイの台湾シリーズ」について
ライターおよび料理家である筆者が、台湾の食や文化を現地で学ぶ「ミニュイの台湾シリーズ」。日本にいる頃にはじめた旅ごはんとお酒にまつわるソロプロジェクト「Minuit(ミニュイ)」の活動として、主に本サイトにて発信を続けています。
自身の目で見て体験する現地での生活、食文化、お出かけ先や旅行先でのあれこれを、写真とともにご紹介していきます。詳しくは第一回記事(台湾の食と文化を伝える、ミニュイの台湾シリーズ)をご一読ください。