【台湾でたのしむ二十四節気】
大寒におすすめの過ごし方と食養生【台北・永春市場】
「台湾でたのしむ二十四節気」について
「台湾でたのしむ二十四節気」は、台湾・台北で暮らす筆者が季節の暮らしや料理について記録していく記事2本立てのシリーズです。
毎回、ひとつめの記事では、その時期におすすめの過ごし方や食べるとよい食材などを、東洋医学および薬膳の考え方にそって記しています。またあわせて、実際に食材を購入した台湾の伝統市場やスーパーマーケット、ファーマーズマーケットなどもご紹介。
そしてふたつめの記事では、台湾でみつけた旬の食材を使ったお料理や、季節の食卓の楽しみ方をご紹介していきます。
先回、小寒の記事はこちら。
【台湾でたのしむ二十四節気24】大寒(新暦 1月20日頃)
旧暦において一年の季節を24に分けたものが二十四節気、それをさらに細かく分けたものが七十二候です。
二十四節気のラストを飾る大寒は、もっとも寒さが厳しい時期です。旧暦で一年の始まりとされる立春(新暦では2月4日頃)までに、お正月の祝いおさめをする二十日正月、地蔵菩薩の縁日である初地蔵、豆まきをしたり恵方巻きを食べたりする節分などさまざまな節目の行事があります。
大寒の期間の七十二候は、以下のとおりです。
初候 款冬華 ふきのはなさく
次候 水沢腹堅 さわみずこおりつめる
末候 鶏始乳 にわとりはじめてとやにつく
春の季語となっている蕗の薹(フキノトウ)が雪のなかから顔を出して、まもなく始まる春の訪れを知らせてくれる一方で、沢の水が凍って張りつめるほどの寒さは続きます。そして、鶏が卵を産むために鳥屋にこもるという意味の「鶏始乳」が七十二候の最後の一候となります。
現在では「節分」というと立春の前日である2月3日(まれに変動することもあり)が連想されますが、立夏、立秋、立冬それぞれの前日ももともとは節分=季節の分かれ目とされていました。
台湾やそのほかの中華圏では立春が一年の始まりであるため、この時期は春節(旧正月)を目前にして人々がお正月の準備をしたり、故郷へ戻るしたくをしたりします。
立春の時期におすすめの料理を下記ページにてご紹介しています。こちらもどうぞご覧ください。
大寒におすすめの過ごし方
大寒は、冬の「陰」から春の「陽」へとエネルギーが転換していくタイミングです。まずは心身が活発になる春に備えて、「早寝遅起き」のスタイルでしっかりと睡眠時間を確保することが大切。また冬の土用の時期でもあり、身体の機能が低下しやすかったり、冷えから風邪や胃腸トラブルを招きやすくなったりします。
寒さと乾燥から身を守ることは引き続き重要です。ゆっくりとお風呂につかって身体を温める、寝る前の足湯やマッサージでリラックスする、温かいドリンクやスープを飲む…。自宅やオフィスでも簡単にできる対策はたくさんありますので、自身の体調に合わせて取り入れてみてくださいね。
日照時間が短くなるとともに気温が低下して、心が沈み外に出るのがおっくうになってしまいがちなこの頃。天気のよい日には朝からしっかりと太陽を浴びてエネルギーをチャージしましょう。散歩や軽い運動を楽しむことで、憂鬱な気分もふきとんでしまうはず。
大寒に食べるとよいもの
薬膳の世界では、冬の間にしっかり養生することで、春に起こりやすい病を防ぐことができるといわれています。人間の生命力をつかさどる「腎」のはたらきを高めるには、黒い食材(黒豆、きくらげ、黒ごま、黒米、黒糖、黒酢など)、滋養強壮効果のある牛肉、羊肉、海老、牡蠣、卵などを積極的にとるようにしましょう。
身体を温めて血行をよくしてくれる香味野菜やスパイスもこの時期には特におすすめ。ねぎ類、唐辛子、ショウガ、にんにくといった温性・熱性の食材は、鍋ものやスープに加えることで相乗効果が狙えます。またシナモン、カルダモン、フェンネルなど冷えを解消するスパイスをホットドリンクに入れてもよいですね。
そのほか、適度に身体をうるおしてくれるキャベツ、白菜、小松菜、ほうれん草などの葉もの野菜、かぶ、大根、ごぼうなどの根菜類をあわせてとれるとなおよいでしょう。
冬から春にかけておいしくなるキャベツは、寒い時期の食卓に欠かせない葉野菜のひとつ。鍋料理やスープのメイン食材としてはもちろん、蒸しもの、炒めもの、ホットサラダ…。さまざまな食材と組み合わせて料理に用いることができます。
台湾でも一年を通して手に入るキャベツですが、火鍋の食材や炒めもの、餃子や肉まんのタネにするのが一般的です。キャベツ自体の種類も多く、台湾人のひとり当たりのキャベツ消費量(年間)が日本人と比べて約2倍であるという統計データもあります。
薬膳の考え方では、キャベツは胃腸のはたらきを助けて、胃痛、胃もたれ、食べすぎによる不調をやわらげてくれる食材とされています。身体の部位においては「肝」「脾」「腎」をサポートしてくれるといわれており、二日酔いを解消する効能も期待できます。
下の記事では、「豚肉とキャベツの蒸し餃子」のレシピをご紹介しています。よろしければこちらもご覧ください。
冬に食べたいフルーツといえば、柑橘類、りんご、いちごなど。流通量が多く価格も手頃な旬のものがやはりおすすめです。
台湾でこの季節になると出まわる「蜜棗(ミィザオ)」と呼ばれるフルーツをご存知でしょうか?ナツメまたはインドナツメと呼ばれていて、小粒の青りんごのような見た目をしています。皮ごと食べることができるうえ、サクサクとした食感にフレッシュな甘さがたまらないおいしさです。
先日、市場へ出かけたときにかご盛りで販売されていた「牛奶蜜棗」という種類のナツメを購入しました。青果店の店主さんに聞いてみると、台湾中国語で牛奶とはミルクのことで、皮は薄く、糖度が高くてジューシーな味わいなのが特徴とのこと。
自宅に帰ってから冷蔵庫で軽く冷やしてからいただきましたが、甘みは強いのにさっぱりしていて、とてもおいしい! もともと好きで冬場にはよく食べているナツメが、より一層好きになりました。
日本で漢方食材として見かける赤い干しナツメと同様に、新鮮なナツメにも気や血を補い、精神を安定させる作用があるといわれています。気力や体力がないと感じるとき、気持ちが落ち込んだりストレスで神経が張りつめているときに食べるのがおすすめです。
キャベツを使ったおすすめの料理レシピ、こちらもどうぞ。
【今回のお買い物スポット】台北・永春市場
台北101を中心にさまざまな商業施設があつまる人気スポット、信義エリア。そこから少し離れたMRT「永春」駅のそばにあるのが永春市場です。1985年に政府公認の市場としてオープンし、2021年には建物の改修が行われて、さらにお買い物がしやすい清潔な市場に生まれ変わりました。
約80ものお店があつまる建物のなかは、整備されて歩きやすく、快適に過ごすことができます。精肉店、鮮魚店、青果店はそれぞれ多くの選択肢があり、製麺店、惣菜店、そのほか多様なジャンルの専門店がずらり。また市場グルメとしては、油飯(おこわ)、点心(肉まんや野菜まん)、肉だんごや魚つみれなどが有名です。
永春市場とそのまわりに広がる場外市場は朝から営業していますが、隣接する虎林街黄昏市場も夕方から夜にお買い物ができる夕市として親しまれています。朝と夜で違った雰囲気を楽しめるので、興味のある方はぜひ2回に分けて足を運んでみてくださいね。
今の時期にぴったりなお料理のレシピ、こちらもどうぞ。