【台湾でたのしむ二十四節気】
夏至におすすめの過ごし方と食養生【台北・永楽市場】
「台湾でたのしむ二十四節気」について
「台湾でたのしむ二十四節気」は、台湾・台北で暮らす筆者が季節の暮らしや料理について記録していく記事2本立てのシリーズです。
毎回、ひとつめの記事では、その時期におすすめの過ごし方や食べるとよい食材などを、東洋医学および薬膳の考え方にそって記しています。またあわせて、実際に食材を購入した台湾の伝統市場やスーパーマーケット、ファーマーズマーケットなどもご紹介。
そしてふたつめの記事では、台湾でみつけた旬の食材を使ったお料理や、季節の食卓の楽しみ方をご紹介していきます。
先回、芒種の記事はこちら。
【台湾でたのしむ二十四節気10】夏至(新暦 6月21日頃)
旧暦において一年の季節を24に分けたものが二十四節気、それをさらに細かく分けたものが七十二候です。
北半球では一年でもっとも昼が長くなる日を「夏至」といいます。二十四節気について詳しく知らない方でも、夏至や冬至は比較的身近に感じられるものかもしれません。夏至の頃には太陽の位置も高くなり、四季のなかでももっとも陽気がさかんですべてが「満ちる」タイミングといわれます。
夏至の期間の七十二候は、以下のとおりです。
初候 乃東枯 なつかれくさかるる
次候 菖蒲華 あやめはなさく
末候 半夏生 はんげしょうず
「乃東(だいとう)」「半夏(はんげ)」といった現代ではあまりなじみのない植物の名前も出てきますが、鮮やかな紫色の花を咲かせるあやめは、この時期の風物詩。夏至から11日目のことを「半夏生(はんげしょう)」といい、この日が田植えを終える目安とされています。
旧暦では6月末日に「夏越の祓(なごしのはらえ)」という行事が行われていました。これは、半年分の穢れを落として残り半年を健やかに過ごせるように祈願するものです。日本では現在も全国各地の神社において、茅の輪をくぐったり形代(かたしろ)を川に流したりする伝統的な行事が受け継がれています。
この時期に降る雨のことを「半夏雨」と呼び、特に農業にたずさわる人々は大雨や洪水に警戒していたのだとか。台湾では梅雨もすっかり明けて、いよいよ夏本番といった気候になっています。午後になると毎日のように降るスコールは、うだるような暑さのなかで快適さをもたらし、清涼剤のような役割を果たしてくれています。
夏至におすすめの過ごし方
中医学の世界では、夏は「心火」の季節ともいわれ、身体の部位では心や心臓との関係が深くなるとされています。激しい運動をしたりエネルギッシュに活動したりするよりも、音楽を聴いてリラックスをする、軽いヨガや瞑想などで心身をととのえるなど、ゆったりとした時間を持つようにするのがおすすめです。
外が暑いのに対して屋内ではクーラーの冷たい風にさらされることも多く、気温差で多くの人が体調を崩しがちになります。カーディガンなどをはおる、あたたかい飲みものを適宜飲む、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる、睡眠時はエアコンのタイマーを使うなど、体温調節を上手に行っていきましょう。
身体が冷えている人は、適度に太陽の光を浴びて散歩をするのもよいでしょう。また、室内では靴下やレッグウォーマー、ストールなどを身につけるなどの冷え性対策を行いましょう。暑がりの人も、エアコンに当たりっぱなしでいると身体がだるくなったり、皮膚が乾燥しがちになったりするので気をつけて。
夏至に食べるとよいもの
中医学では、それぞれの季節に対応する五味(辛味、甘味、酸味、苦味、塩味)があると考えられており、夏は「苦味」をとるとよい、とされています。今が旬のゴーヤのほか、セロリ、ケール、パセリなどの苦みのある野菜を積極的に取り入れてみましょう。またドリンク類では、緑茶をはじめとする苦いお茶類、コーヒーなどもこの時期にぴったり。
気温が高く身体に熱がたまりやすい時期なので、適度に水分のある涼性・寒性(冷やす性質のある)の食材をとることも大切です。野菜ではきゅうり、なす、トマト、冬瓜、オクラなど、食後にはスイカ、メロン、バナナ、パイナップル、マンゴー、ドラゴンフルーツなどがおすすめ。
また、ハトムギや緑豆、そば、小麦など穀類のなかにも身体を冷やす性質を持っているものがあります。食欲がないときはこれらの穀類を使ったあっさりめの料理を食べて、胃腸をいたわりつつエネルギーをとりましょう。消化機能も弱くなりがちな時期なので、味つけの濃いもの、油を多く使うものはできるだけ避けて、甘いものもとりすぎないようにすると健康に過ごせるはず。
市場や青果店にはさまざまな種類の夏野菜が出まわります。台湾でもオクラは「秋葵」と呼ばれてポピュラーな夏野菜ですが、日本のスーパーで見かけるのとは少し違うタイプも。例えば、沖縄の在来種である「島オクラ」と同様にさやが丸く、大きくてねばりの強いタイプの丸オクラ。さっとゆでてそのまま食べるのがとてもおいしいです。
先日、台北の有名な観光ストリート、迪化街の近くにある永楽市場で買い出しをしました。そこで購入したのは、「紅オクラ」または「赤オクラ」と呼ばれる赤い色をしたオクラ。
大きめでさやは角ばっていて、カットすると断面が星型になるので和えものやトッピングにも最適です。ちなみに赤い色素はブルーベリーなどにも含まれるアントシアニンからくるもので、ゆでると緑色に変わります。
薬膳の考え方では、オクラは身体の熱をとって水分を補い、腎機能をサポートしてくれる食材とされています。また粘性があるため、胃の粘膜を保護してくれたり喉の乾燥を予防してくれたりするといううれしいはたらきも。鮮やかな色をしていて柔らかく、産毛がしっかりあるものを選ぶようにしましょう。
次の記事では、夏にぴったりな栄養満点のおそばのレシピをご紹介したいと思います。市場でみつけた夏野菜・香味野菜のほか、精肉店で買った新鮮な鶏肉をトッピングに加えてボリュームのある一品に仕上げてみました。よろしければこちらものぞいてみてくださいね。
永楽市場の青果店では、ドラゴンフルーツを買ってみました。ドラゴンフルーツは台湾で一年中流通している果物のひとつ。夏から秋にかけて旬を迎えるため、特にこの時期は、あちらこちらで山のようにどっさり積まれているのを見ることができます。また、価格もおどろくほどリーズナブルです。
ドラゴンフルーツにはいくつかの品種があり、今回購入したのは白い果肉のホワイトドラゴンです。包丁で半分にカットしてスプーンですくうか、または皮をむいてひと口サイズにカットして食べるのがおすすめ。個人的には、レモン果汁をかけて少し冷やしてからいただくのがおいしいと思います。
薬膳の世界では、ドラゴンフルーツは熱を冷ましてデトックスを促してくれるフルーツとされています。栄養学的に見てもビタミンやミネラル、食物繊維が豊富で、便秘解消やダイエット、アンチエイジングなどにも効果的。冷え性の方はあまりたくさんとりすぎないように気をつけましょう。
【今回のお買い物スポット】台北・永楽市場
今回ご紹介するのは、観光客にも人気の迪化街(大稻埕)エリアにある永楽市場。週末はもちろん平日も地元の人々の台所としてにぎわう、活気あふれる伝統市場です。このあたりは昔「永楽町」と呼ばれ、輸入繊維の卸売市場として台湾で最大規模を誇っていたのだそう。今も市場の2・3Fは布市場になっており、さまざまな布生地や服飾雑貨が販売されています。
1Fには生鮮食品や雑貨店のほか、ローカルグルメを味わえる飲食店もいっぱい。特に週末のお昼どきには、ランチを楽しもうとやってくるお客さんたちであちこち行列ができるほどの盛況ぶりです。また最近ではおしゃれなおみやげショップやコーヒー店などもできていて、若い人にも浸透している台湾の市場カルチャーを肌で感じることができます。
精肉店や鮮魚店はなかなか外国人には手を出しづらい雰囲気かもしれませんが、お店の人たちはとてもフレンドリーで親切。青果店でも「これは何ですか?」「どうやって食べるのですか?」と聞くと、旬のものやおすすめの食べ方を教えてもらえたりしてとても楽しいです。
夕方になるとだいたいのお店が閉まってしまうため、午前中からお昼にかけての時間帯に訪れるのがベター。テイクアウトができるお店もたくさんあるので、観光ついでにここで台湾らしいお惣菜やおやつを調達するのもよいですね。
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