【台湾でたのしむ二十四節気】
冬至におすすめの過ごし方と食養生【台北・蘭州市場】
「台湾でたのしむ二十四節気」について
「台湾でたのしむ二十四節気」は、台湾・台北で暮らす筆者が季節の暮らしや料理について記録していく記事2本立てのシリーズです。
毎回、ひとつめの記事では、その時期におすすめの過ごし方や食べるとよい食材などを、東洋医学および薬膳の考え方にそって記しています。またあわせて、実際に食材を購入した台湾の伝統市場やスーパーマーケット、ファーマーズマーケットなどもご紹介。
そしてふたつめの記事では、台湾でみつけた旬の食材を使ったお料理や、季節の食卓の楽しみ方をご紹介していきます。
先回、大雪の記事はこちら。
【台湾でたのしむ二十四節気22】冬至(新暦 12月22日頃)
旧暦において一年の季節を24に分けたものが二十四節気、それをさらに細かく分けたものが七十二候です。
一年のなかでもっとも昼が短く、夜が長くなる「冬至」。次の節気である「小寒」までの間に大みそかやお正月をはさむこともあり、その年をふりかえったり来年の計画を立てたりと、多くの人にとって大事な区切りとなる時期ではないでしょうか。
冬至の期間の七十二候は、以下のとおりです。
初候 乃東生 なつかれくさしょうず
次候 麋角解 おおしかのつのおつる
末候 雪下出麦 ゆきわたりてむぎいづる
夏至に枯れて冬至に新芽を出すといわれる靫草(ウツボグサ)。この「冬至芽」は、生命力をあらわすことから長寿のシンボルとされています。また、大鹿(ヘラジカ)の角が冬になって抜け落ち、雪の下では越年草である麦がその芽を伸ばしていく頃です。
「冬至、冬中、冬はじめ」ということわざがあるように、暦のうえでは冬のまんなかにあたる冬至ですが、本格的な寒さはこれからやってきます。厳しい冬を越すために、柚子湯につかったりかぼちゃを食べたりといった風習が生まれたのですね。
台湾では冬至に「湯圓」と呼ばれるおだんごを食べるならわしがあります。くわしくは下記の記事でご紹介していますので、ご興味のある方はご一読ください。
冬至におすすめの過ごし方
中医学の考え方では、冬を健康に過ごすために重要なのは、「寒さを取りのぞき温かさを保つ」ことだとされています。邪気の入りやすい首もとや冷えやすい下半身をしっかりと防寒するほか、腹部や背中も忘れずにケアするのがポイント。マフラーや帽子はもちろん、腹巻やインナーなど見えない部分も工夫して、寒さから身を守りましょう。
通年にいえる養生の基本として、睡眠時間を十分にとることは必要不可欠です。特に冬場は、朝日とともに起きて陽が落ちる頃に休む「早寝遅起き」が理想といわれています。そんなに早く眠れないよ、という方も夜はお風呂にゆっくりつかり、マッサージやストレッチなどをしてリラックスする時間をもうけるのがおすすめ。
冬至は一年のなかでもっとも陰の気が高まる日ですが、この日をさかいに再び春に向けて陽の気が高まっていきます。一年の振り返りをしつつ、新しくはじめたいことやチャレンジしてみたいことを実行にうつすのにもぴったりの時期です。
冬至に食べるとよいもの
中医学では、冬の養生には「腎」を養って身体の抵抗力を高めるために黒いものをとるとよい、といわれています。黒豆、きくらげ、黒ごま、黒米、黒糖、黒酢がその代表的な黒い食材です。そのほかしいたけ、ごぼう、海藻類など手に入るものでかまいませんので、積極的に食卓に取り入れていきましょう。
乾燥しがちな冬には、葉野菜や身体をうるおしてくれる食材をとることも大切。白菜、ほうれん草、小松菜、キャベツ、大根、れんこん、ヤマイモなどは鍋料理やスープにもぴったりです。また、ねぎ類、唐辛子、ショウガ、にんにくといった温性・熱性の食材も適度にとるようにしたいものです。
食べものからしっかりとエネルギーをたくわえて冬を元気にのりこえるためには、滋養強壮効果のある肉類や海鮮も積極的に取り入れる必要があります。牛肉、羊肉、マグロ、鮭、海老、牡蠣、貝類…献立のメインにはこのような食材をぜひ取り入れてみて。
台北も日に日に気温が下がってきて雨が増え、冬らしい気候になってきました。台湾では、人々は冬だけでなく通年、「火鍋」を食べる習慣があります。ですがこの時期になるとそれに加えて「羊肉爐(ヤンロウルー)」や「薑母鴨(ジャンムーヤー)」といった特別な鍋料理のお店があちこちにオープンし、大盛況になるのです。
ある日、食材店で「羊肉爐(ヤンロウルー)」の漢方スパイスセットをみつけて購入した私。お肉さえ買って下ごしらえすれば、あとは漢方スパイスと野菜を一緒に煮込むだけなので簡単そう! そう思い、伝統市場に行ってメインのヤギ肉やそのほかの食材を調達してきました。
台湾で「羊肉(ヤンロウ)」というと、そのままヒツジの肉をあらわすこともあればヤギの肉のことも含まれたりします。「羊肉爐(ヤンロウルー)」に使われるお肉はもっぱらヤギ(「土羊肉」または「山羊」とも呼ばれます)。市場の精肉店では、好きな分量だけお願いして、骨つきのブロックをちょうどよいサイズにカットしてもらえるのがうれしいところ。
日本国内では主に沖縄で食されているヤギ肉。羊と同様に身体をあたためて、疲労を回復してくれる薬膳食材として重宝されています。
「羊肉爐(ヤンロウルー)」にはなんでも好きな野菜を入れてよいのですが、葉野菜のメインは白菜にしました。柔らかい葉の部分と厚みのある根元の部分、鍋に加えるとどちらも違ったおいしさが楽しめますね。
薬膳の考え方では、白菜は水分代謝を高めて胃腸の調子をととのえ、余分な熱を冷ましてくれるはたらきがあるとされています。熱性のヤギ肉との相性もばっちり!
下の記事では、ヤギ肉と野菜がたっぷり入った台湾の鍋料理「羊肉爐(ヤンロウルー)」のレシピをご紹介しています。よろしければこちらもご覧ください。
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【今回のお買い物スポット】台北・蘭州市場
MRT「民権西路」駅または「圓山」駅から徒歩圏内の位置にある蘭州市場は、歴史のある古い伝統市場のひとつ。もともとは家畜市場と食肉処理場であった場所が、1970年代の改修工事によって蘭州市場になったのだそう。大きな建物の1階部分がすべて市場になっており、雨の日でも快適にお買い物を楽しめます。
朝から夕方くらいまで営業しているこの市場は、ジャンルによって大まかにエリアが決まっています。言葉の通じない観光客にとっては少しハードルが高いかもしれませんが、地元民(特に年配層)に愛されているローカルマーケットという雰囲気。場内にはヘアサロンやネイルサロンなどもあり、来るたびに、みんなそこで生活を営みながら商売をしているのだなあ、と台湾の人々のおおらかさやたくましさを感じます。
一角には飲食店が連なっていて、ここで食事をしたりお惣菜を買ったりすることができます。ソーセージをはじめとする精肉加工品のお店、魚介を使った揚げものを販売するお店など、知る人ぞ知る隠れた名物グルメも。保安宮や迪化街といった大同エリアの観光スポットを訪れる際は、ぜひ足を伸ばしてみてくださいね。
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