【旅エッセイ】台中発の火鍋ディナーと
夜のファンタジー街散策

旅とエッセイ

〈旅日記1〉 台湾(台北・台中)

5日目 夜〜6日目 午前

台中國家歌劇院(台中メトロポリタンオペラハウス)に立ち寄り、ビアバーでのんびりアペリティフを楽しんだ私たち。

お待ちかねのディナー! 訪れたのは、台中発の火鍋店である「鼎王麻辣鍋」。台北市内にも複数の支店があり、ピークタイムには予約必須の人気店だ。私たちはウェブサイト上で予約を済ませていたので、待つことなくスムーズに入店できた。

鼎王麻辣鍋では、漢方ベースの辛いスープ「麻辣鍋」と豚肉入りの酸っぱいスープ「酸菜白肉鍋」の2種類を味わえる。それぞれ好みで選ぶこともできるけれど、定番は2種類のスープを一度に楽しめる「鴛鴦鍋」。

ここのお店の火鍋は、食材のクオリティが高くて、スープも絶品なので、たれをつけたりせずにそのまま味わうのがおすすめ。トッピングの香菜やねぎは、たっぷり加えた方がおいしいと思う。

火鍋店では、ひたすらにビールだけを飲み続けるうえ、火を通した野菜とスープをいただくことで、すぐに満腹になってしまうのが唯一の難点だ。

ふだんなら「二軒目はどこに行こうか?」とはしゃぐところだけれど、しばらくは食べもののことを考えられなそう。というわけで、腹ごなしに、台中の街を散歩してみることにした。

お店を出て、美村路と呼ばれる一帯を目指して歩く。知らない道というのは、どうしてこんなにも興味をひかれるのだろう。

誰もいない公園、ポツンと灯るお店の明かり、若い恋人たちのおしゃべり。目にするもの、耳に入るものすべてがメランコリックな気持ちにさせてくれる。

小さくて気の利いたバーなどないかな、としばらく探して歩いてみるものの、一向に見当たらない。途中でみつけた散歩マップを眺めながら、どこを目指すかふたりで相談する。

旅行前に少し調べものをしていたとき、「綠光計畫」というリノベーションスポットがあるのを知って気になっていたのだった。そして今いるこのあたりがまさに、その「綠光計畫」らしい。

ショップやカフェはもちろんどこも営業していないし、人の気配もない。真夜中の遊園地に迷い込んだような、不思議ななつかしさに包まれながら、周囲をぐるり。

ここに来る道すがら話した地元の人に「この先にファンタジー街があるよ」と言われて、「どこのことだろう?地図にはのってないみたいなのに…」となっていたのだけれど。

後で調べたところによると、「ファンタジー」というのは、このエリアから始まった、古い建物と植物を共存させながらクリエイティブを発信する空間のことだそう。今では台中市外のいくつかの場所にもその活動が広まっているようだ。

夫がカメラを持って、私の写真を撮る。彼は、私以上に夜の街あるきが好きで、夜に写真を撮ることも好む。私はその隣で何かを眺めたり、ぼうっと考えごとをしたりするのが性に合っていて。ふたりのペースが違っているようで似ているのは、いつもおもしろいなあと思う。

いつかまた台中に遊びに来たときは、昼間のファンタジー街にも足を運んでみたいものだな。

結局バーはみつからず、あきらめて帰りにタクシーで中華路夜市へ。中華路夜市は、道路の両脇に店舗や屋台が連なる、ローカル向けの夜市だ。

ラインナップをひと通り眺めてから、「鹽酥雞(鶏の台湾風唐揚げ)」をテイクアウト。ホテルに戻り、ビールとともにいただく。そしておとなしく就寝。

翌日の朝は、再び第二市場へ行って軽めの朝ごはん。たまたま通りがかった「顔記肉包」というお店で、肉包(肉まん)を買ってパクパク。

小ぶりの肉まんは、厚みのある生地に肉餡がぎゅっと詰まっていてしっかりめの味つけ。なかなかおいしかった!

その後に「立偉麺食」という市場内の小吃店で肉燥飯(肉そぼろごはん)と魷魚羹(イカのとろみスープ)を食べて、お腹いっぱい。

ホテルに戻り、したくをしてチェックアウト。帰りがけにスイーツショップ「宮原眼科」にも立ち寄る。甘いものが苦手なので、食べものにはあまり興味がなかったものの…一度、建物の中に入って見てみたいと思っていた。

宮原眼科は、日本統治時代に眼科診療所として使われていた建物を改修したスイーツショップだ。レトロなインテリアに可愛らしいパッケージのおみやげ、人気なのもうなずける。

このテイストが好きそうな友人たちへのおみやげにしよう、といくつか購入。自分用にはメイドイン台湾のハチミツを。

そうして、台中站(台中駅)から高速鉄道(高鉄)に乗り込み、台北へと出発。

Mizua

旅行雑誌の編集者兼ライター、週末バー店主を経て、現在は大好きな台湾での生活を楽しんでいます。本サイト「旅のあと ふたりのレシピ」運営のほか、台湾情報ブログも...

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